祈祷・祈願とは

神仏に強く祈りをすることは、祈祷・祈願と呼ばれています。祈祷も祈願も神や仏に祈りをささげる事という点では同じですが、この二つには大きな違いがあります。それは、祈願というのは特定の目的を持っている人が、目的を達成するために神仏に自分自身で祈りをささげる事なのに対し、祈願は寺の僧侶や神社の神官、また祈祷師などを介して自分の代わりに祈ってもらうという行為です。つまり、祈祷は自力本願なのに対して、祈願は他力本願的な祈りと考えると分かりやすいかもしれませんね。ちなみに、祈祷や祈願のように祈りをささげることでも、儀式を通して行う場合には、礼拝と呼ばれることになります。

 

もともと神や仏に対する祈りというのは、何かしらの目的があり、それを実現するために行う行為です。病気からの回復を祈ったり、自分もしくは他人に良いことが起こりますように、と祈ることもあれば、豊作を祈ることも多かったようです。祈り方にはいろいろなスタイルがあり、祈祷師が呪文を唱えながら祈りをささげるスタイルもあれば、黙祷など言葉ではなく念じることで祈るスタイルもあります。また、踊りや舞など身体で祈りを占めることもあり、世界中ではあらゆるスタイルの祈願や祈祷が行われています。

 

祈祷や祈願は、本来は神や仏に祈りをささげる行為なので、特定の宗教とかかわりがあるわけではありません。しかし、宗教の中には祈りが持つ部分が大きく、祈りと宗教を切り離して考えることはできません。例えばキリスト教の場合には、祈りをささげることは自分自身の信仰心を示す大切な行為ですし、賛美歌を歌ったり聖書を読むなど、様々な形として表れています。仏教においては、仏さまの力で災難や病気から救ってもらいたいという宗派が存在しているほどですし、神道においては、神事その者が祈願や祈祷を形にしているもので、現在でもお祭りや祀りなどとして行われています。

 

イスラム教においては、他の宗教のように偶像崇拝をすることが禁止されているという特徴がありますが、メッカが存在するサウジアラビアの方角を向かって毎日祈りをささげる習慣が根強く残っています。この宗教では、イスラム教の神以外には頭を垂れてひれ伏してはいけないという教えがあり、生活の中でこの教えを守ることも祈祷や祈願の一種と考えることができます。祈りという行為は、国境や人種を超えて世界中の人間が共通して行う神様への問いかけなのかもしれませんね。